平成20年12月8日
愛媛県立中央病院 河野 知子
実践塾最後の宿題は驚きの連続だった。その一つはこの分厚い本は先生の旅日記なのだと思っていた(失礼ですね。)らなんとまあ事実から学ぶ問題解決の方法が物語りでもなく実際に行われていたこと。二つ目はネパールの標高2000〜3000メートルもある小さな山村で手作りの海外援助が行われていたこと。そして三つ目はその中で行われた地域実態調査は私が新人看護師だった頃学んだKJ法の大家川喜多田二郎先生の主催されたものであった事だったことであった。
その中でも私が興味をそそられた部分は、先生がネパールの人々の地域実態調査に朝夕1軒1軒を訪ね歩き、村民の暮らしの中から「家の中の充満する煙がネパール人の健康を阻害している」と問題を見つけたことである。半年間の実践塾で私が学んだのはまさにこの「現場の問題は現場に足を運んで事実の中から学べ」ということであった。実践塾最初の頃の私は仕事上の問題点は「忙しすぎて物を大切にしないスタッフが問題。」と決めつけていた。しかし絆創膏さえも大切にできない理由は何?と問いかけて調査を開始してたくさんのグラフを書いてみると使用実数、使用期間、単価、患者への使い方の実態などが見てきて有効で患者にとって安全な使い方はどうあるべきかを実際の中から見つけることが出来た。これは自分の部署での問題を見つけるために「やって・見て・考えて」と調査を繰り返し行った結果明らかに出来たのだと思う。「薬の不足」に目を向けたのでは問題の本質は見えてこないのであり、この問題の本質がずれないことは仕事上では特に大切なことであると思う。そのための綿密な計画に基づいた調査が大切なのはいうまでもない。実践塾で学んでいない半年前の私はこの問題の本質を見つけられずに机上の解決策を並べて解決したそぶりをしていたのかも知れない。本当に実践塾には感謝している。
またこのネパールの煙突計画はとてつもなく壮大な計画に発展していた。先生が直接村民と触れ合う中で見つけた問題を、現地の住民を巻き込んで「自分たちの問題」にしていったことで「人が育っていく」ことである。自分たちの手で煙突を作ることが煙から開放された生活につながり、産業にも発展し、森林の伐採を減らし健康で衛生的な国づくりにつながるという副産物は計り知れないということに住民自ら気が付けば、煙突の普及は早いに違いない。仕事上の問題を解決するのに理想論を振りかざすのでなく実践塾でも学んだように「人離れして素直な気持ちでものを見ること」で自己の成長が出来たら、真の問題の発見が出来、人はおのずから向上心を持って解決しようとするものかも知れない。
今次席である私は、スタッフの実践的モデルとして人を育てる立場にもある。今回実践塾の学びを現場のスタッフに示しながら解決策を強制するのでなく、自分たちの意思として示して欲しいと思っている。事実を事実として受け止めて反省の中から向上させていく気持ちが大切であるということを今伝えようとしているところである。また、問題解決には周囲の人を巻き込んでいくことも大切であり、一人一人のことをもっと大切にしなければならないとも思う。毎日の忙しさに根を上げそうになりながら不平不満を言いながら働いていた自分を反省し、実践塾で学んだ向上心と感謝の気持ちを忘れないで、看護というすばらしい職業を選んだ仲間とともにこれからも成長していきたいと願っている。
実践塾で支えてくださった坂部先生や先輩方、そして十二期生の仲間とともに学んだ半年は何物にも変えられない貴重な時間でした。少し寂しいなあという気持ちもありますが、課題は山積みの現場の問題を一つずつ解決するためネパールの煙突計画を地図として一歩を踏み出したいと思います。ありがとうございました。
河野知子さんの「愛媛実践塾・卒業論文」の、
「ネパールの煙突計画・読後感想レポート」は、
「第]U期生・第3番目の到着でした。
ありがとうございました。
河野知子さんはこの半年間を「実践塾」とともに歩み、
「実践塾の仲間」とともに成長して来ましたね。
そして何よりも河野知子さんとして大きかったことは、
「現場の事実とともに歩みはじめた」ことでありましょう。
僕の「ネパールの煙突計画」という拙い実践活動が、
河野さんに大きな関心と大きな影響を与えたとするならば、
それを受け留める心が河野さんの中に育っていたからだ、
と云う以外に説明のしようがありません。
河野知子さんがこの半年間の「実践塾」で学んだことは、
「現場の問題は現場に足を運んで事実の中から学べ」
ということであったと河野さん自身が述べていますが、
これこそ「実事求是・創意工夫」の極意ですね。
そしてまた河野知子さんはこうも述べています。
「半年前の私は問題の本質を見付けられずに、
机上の解決策を並べて解決したそぶりをしていた」
のかも知れない…と。
僕は河野さんのことを「そうであった」とは思いませんが、
でもあなた自身がそのように受け止めていることが大切であり、
また何よりも素晴らしいではありませんか。
こういう受け留め方をする河野さんの感受性が尊いのです。
また、
「仕事上の問題を解決するのに理想論を振りかざすのではなく」、
「人離れして素直な気持ちでものを見ること」で、
自己の成長が出来たら「真の問題発見」が出来るようになり、
そういう人は「自ずから向上心を持って解決しようとする」のかも知れない、
と締めくくっている。
毎日の忙しさに根を上げ不平不満を云いながら働いていた自分を反省し、
後輩スタッフには「事実を事実として謙虚に受け止め」て、
その「反省の中から向上させていく気持ちが大切」であると云うことを、
今河野知子さんは後輩たちに伝えようとしている、と。
ではでは。 (by 坂部正登)
Tuesday, December 09, 2008 1:24 AM