2005年9月15−16日2日間(八王子、柚木・大学セミナーハウス)にて
帝京大学・法学部 小坂紀一郎教授と夏休み中のゼミ学生10名が発想法を研修しました。

 

ゼミ合宿への想い

 学生と接していていつも感じているのは、教える者としての役割を果たしえている
のかどうかという「不安」である。もちろん、それは、人間という不可思議な存在を
教育する仕事を負わされている教師なら誰でも持つ旧くて新しい普遍的なものである
とも言えるであろう。しかし、私の「不安」は、今の時代、そしてこの社会を反映し
たものであると思える。
 今の学生は、「曖昧な不安」(玄田勇史氏の用語)を持つと言われる。以前と比べ
て、学生の置かれた状況は、全く変わってしまった。ついこの間まで、少なくとも、
学生の親たちの時代までは、家庭、社会、職業、雇用など人生の舞台が、ある程度
はっきり、かつ、しっかりし、これから社会に出る者は、それを前提として、いかに
生き方を選択し、自分を適応させていくかということが生きていくための主たる指針
であった。ところが、いまや、すべてがゆらいでいる。環境は人生の足場のようなも
のである。それがグラグラしているから、どうしてもオッカナビックリになってしま
う、という学生たちのつぶやきが聞こえてくる。
 そのような学生に対して大学は十分に対応しているとはとても言えない。いつの時
代でも個としての人間の悩みは存在する。一人一人の問題に個別に向き合うのは土台
無理な話だし、大学の役割かどうかも疑問である。しかし、今の学生が抱える問題
は、一種の時代病理のようにほとんど全ての若者に共通している。それを受け止めな
い大学教育は砂上に楼閣を造るような虚しい営為になってしまうのではなかろうか。
 「曖昧な不安」をはっきりした不安にまで自覚し、それを自分自身の考える力でな
んらかの方向を見出す、その手がかりを与えたいというのが、今回のゼミ合宿の動機
であった。(法学部に所属する私のゼミは、学生に現実の問題を考えてもらいたいと
いう趣旨から、行政のさまざまな課題(実例を参考にして私が作成したもの)に対す
る答えを見出すというもの)自らを非日常の中に置き、大学教育とは別の角度から考
えるヒントを得る。そのための手段として選んだのが、畏友である坂部さんであり、
発想法だったのである。
 題材は、西堀栄三郎著『南極越冬記』(岩波新書)であった。学生たちにとってこ
れからの人生はまさに未知の大陸である。第一次南極越冬隊の体験と西堀隊長のリー
ダーシップのあり方から何事かを学んでくれるのではなかろうかという密かな期待が
あった。出版以来の私の愛読書でもある。
 さて、ゼミ合宿の成果はどうであったか。発想法による作品の出来栄えは御覧のと
おりである。正直言って、おしなべて現代の学生の代表のような積極性に乏しいゼミ
生たちを相手にいかにベテランの坂部講師も途方にくれるような場面があるかもしれ
ない、と最悪の事態を覚悟していた。それが、わずか2日間で学生たちが活発に議論
し、(坂部講師に鞭打たれながらではあったが)自分の主張をする姿を見て、私自身
の「曖昧な不安」は吹き飛んだのであった。
 今回の試みがどの程度意味があったのか、今の時点ではまだ分からない。しかし、
教授法に悩む一教官としての私は、希望はある、ということが分かっただけでも大き
な収穫であった。
 献身的に御指導いただいた坂部講師、高橋弘樹助手、中嶋拓助手に学生たちととも
に心からお礼申し上げたい。

帝京大学・法学部 小坂 紀一郎

 

今回の教材は西堀栄三郎氏の著書の中から「南極越冬記」を事前に読み、その中から

 
特に心象の深かった箇所や感銘を受けた箇所を10枚のラベルにして、それを「チーム発想法」を
使い、まとめました。(ラベルに書く事は宿題)

 

1日目は午前中に坂部先生の講話があり、昼食後作業に入る

Aチーム(柿チーム)
Bチーム(東京越冬隊)
Cチーム

自分の書いた10枚のラベルを読む事から始まる

皆のラベルを集め、それを均等に分けます

リーダーから一枚を読み、それに似ているラベルを集める

集まった2枚のラベルから「表札」を付けます

一組の表札が出来たら坂部先生の元へ

まだ、この頃は何をしているのかゼミ生は○×△状態?

何度か坂部先生の元へ通う間に

この頃にから何をしているのか、どうしたら良いの

次第にゼミ生に笑顔と真剣さが出てきました

全てのペアの表札作りが終わったら、もう一度ペア作り

2順目・3順目と進んで行きます

顔が少し赤いのは夕食時のビール!ピッチが上がります

2日目・ペアが5から7になったら構造化です

表札作りは1日目に完了、その後プロジェクトXを見る

構造化で循環や流れの中に発見する物があります

いよいよ作品化をします

チーム発想法では何故だか役割が自然と出来ます

昼食後1時30分までに仕上げて発表!

同じ様に指導しているのですが、それぞれの個性が

どんどん発揮され作品が出来上がります

完成後、要約文とタイトルを考えます

2日目は朝より構造化と作品化を午前中に、午後から各チームの発表会になりました。

各チームの作品をクリックしてください。


上段よりA,B,C各チームで、左側は発表風景で右側は発表を終えた後の記念撮影です。

作品の発表後の各自の感想の中で「観光なら南極に行きたい」と言った人と「是非とも南極越冬を体験したい」と
わかれていました。